2021年3月12日 9:00 am

桜も本格的に咲いてきました。もう春です。

名古屋市名東区、牧会計事務所の佐藤です。

 

前回、法人の寄付金についてご紹介しましたので、

引き続き、法人の寄付金にまつわる事例についてのご紹介をいたします。

 

多くの中小企業の社長は、会社に貸付をしていると思います。

会社としてはこれら借入金に対する利息の支払いは任意となっています。

しかし個人(社長)からの借入ではなく、他社からの借入になると、相当分の利息を支払う必要が発生します。

会社は営利を目的にして存在しているため、会社(他社)が行う行為は全て利益(将来の利益)に結び付くことが前提となっています(非営利法人等を除く)。

そのため、会社間では無償による貸付行為は認められず、借りた側は相応の利息を支払う必要があります。

 

これが同族会社間の金銭の貸し借りになるとどうなるでしょうか。

 

例えば、親会社Aが、倒産しそうな子会社Bに対し、金銭貸付を行う行為は同族会社間の貸し借りになります。

子会社Bは親会社Aからの借入がなければ倒産してしまいます。

親会社からすれば、子会社が潰れてしまうと多大な損失となる為、

例え無償での金銭貸付行為であっても、損失を生まないようにする(営利を目的にする)ための行為と呼べるかもしれません。

しかし大前提として、会社間の貸付行為には利息を取らなければなりません。

 

果たしてこの場合は利息を取る必要があるのでしょうか?

この事例は昭和47年に争われた清水惣事件の概略となっています。

 

税務署側は、親会社が子会社に無利息貸付けを行ったことにつき、利息相当額につき収益(受取利息)とし、

同額を寄附金と認定して、寄附金の損金不算入額を加算する更正処分を行いました。

前回記事でもご紹介した通り、法人が寄付金を損金に出来る金額は限られています

損金に出来る部分を超えると、当然法人税の計算上不利になります。

 

またこの事例の時は、金利が非常に高く、貸出金利は10%以上を取る事も珍しくありませんでした。

そのため税務署は、金利を年10%と試算し、2年分約460万円分を親会社の所得として加算しました。

事件が起きたのは昭和39年ですから、物価に換算すると現在と約4倍の違いがあります。

 

当然、会社側(納税者)は反発し、裁判となります。

 

第一審の地裁では、納税者の主張が認められ納税者勝訴となりました。

しかし第二審の高等裁判所では一転、納税者の逆転敗訴となりました。

 

判決理由として、

「営利を目的とする法人が何らの合理的な経済目的も存しないのに、利益を他に移転することはあり得ない。」と述べられています。

確かに考えてみると、

親会社がお金を銀行に預けて利息を受取ったら、それに対して税金(法人税)がかかります。

しかし子会社に対して無利息で貸し付けを行うことが出来れば、

子会社がこのお金を銀行に預けて利息を受取っても、倒産しそうな赤字会社なので税金はかかりません。
親会社が子会社に無利息融資をすることで、所得を振り替えて支払う法人税を減らそうとした、とも考えられます。

 

この裁判で納税者の主張が認められると、

上記のような利益の付け替えが関係会社間で容易に起こってしまいます。

ただし、これは利率が非常に高い時代に起こった争いです。

 

現在、1%を切る貸出金利も珍しくない中では、裁判まで進むことは考えづらいでしょう。

しかしあくまで会社間の金銭の貸し借りは、

例え関係会社の間であっても利息が発生する事に注意しなければなりません。

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