牧会計事務所 所長の牧です。
今年に入っていから、7~8件の相続税申告の依頼がありました。相続税申告の手順を簡単にご説明しますと以下の通りになります。
1.被相続人(亡くなった方)の相続財産を財産別(土地、建物、有価証券等、生命保険、現金預金、その他財産、債務)に決められた評価方法に従って計算します。
2.相続税の総額を計算します。
3. 誰が何を相続するか、遺産の分割をします。
4. 相続した財産額により相続人別の相続税額を算出します。
相続の申告期限は相続の開始から10か月以内です。なぜそんなに時間を要するか、一番の理由は土地の評価に使う路線価格が、毎年7月1日に発表されるからです。1月1日に相続が開始しても約半年は財産の総額を算出することができないのです。
その他は、遺産の分割がうまくいかなく時間が要するケースもたまにあります。
相続申告をしていて、問題が多いところは以下の通りです。
1.被相続人の妻の預金が多額にある場合
被相続人の預金は被相続人名義分だけではなく、その妻の預金も被相続人の相続財産になるケースがあります。例えば、妻が専業主婦の場合で毎月の生活費を定期的に被相続人から受けている場合。妻が努力して生活費を切り詰めて、毎月々残してためた金額が2000万円あった場合の2000万円は妻の財産ではなく、被相続人の財産になるのです。
残酷な話ですが、相続税では妻が切り詰めて貯めたお金を妻の財産と認めてくれません。妻の努力は関係なく評価されます。お金の根源が被相続人である以上、妻がどんなに努力して貯めても被相続人の相続財産になってしまいます。これを避けるためには、毎年、年末に貯めたお金を妻が贈与で受けたと書類のやり取りをしなくてはなりません。現実問題、妻はいわゆる”へそくり”を公表したくないでしょう。そんなに余っているなら俺に”こずかい”をくれと言われかねませんから。
2.特別受益がある場合、相続人間でもめるケースがあります。
相続税では、原則、相続3年以内の贈与財産は相続財産になります。3年を超えていれば相続財産にはなりません。これは、あくまでも相続財産の総額を計算する上だけの話です。相続人間の相続分となると話は別です。
例えば、10年前に被相続人から住宅資金の贈与を1000万円を受けた場合、1000万円は特別受益になります。相続財産が1億円で相続人が二人の場合、法定相続分は2分の1づつの5000万円になります。しかし特別受益を加味すると、6000万円と5000万円になり相続人間で財産の差がでます。このことで、相続人間でもめ事が起きます。
もらった方は、親が生きている間にもらったんだから関係ないだろうと言います。もらわなかった方は1000万円の贈与がなかったら、もっと相続分が増えたはずだと主張します。
結果的に揉めた場合、贈与の金銭的な流れが把握されれば特別受益が認められ相続財産に”持ち戻し”されます。
この特別受益には時効はありません。10年前でも50年まえの贈与でも特別受益になります。
しかし、 被相続人は、自分の相続財産をどのように配分するか自由に決めてよいのですから、被相続人が、特定の相続人への生前贈与や遺贈を、その人の特別の取り分として確保してあげたいケースもあります。持ち戻しをさせないという意思を明らかにした場合は、その意思を尊重しなければなりません。
このため、持ち戻し免除の意思表示があったときは、持ち戻しをしないことになります。必ず意思表示の文章を残さなくてなりません。