2022年6月6日 10:15 am

梅雨のシーズンが近づいてきました。

本格的な夏はすぐそこです。

名古屋市名東区牧会計事務所の佐藤です。

 

さて、先日表題の質問を顧客様から頂きました。

・役員報酬はいくら取っても構わないのか?

例えば売上高が3億円の会社で、役員報酬を1億円取っても構わないのか?

 

実際には、

役員報酬で取る場合の諸税金等と、会社に利益を残した際の法人税等の比較と考慮をする必要があるかと思います。

法人税等は利益の約30%であるのに対して、給与にかかる諸税金は0%~約55%(住民税等も含む)と非常に幅広く設定されています。

今回、これら税金の点は考慮に入れずに、役員報酬はどれくらいとっても良いのか?という事のみ考えていきます。

 

 

役員報酬、役員に対する退職金が高すぎるとして、裁判になった有名な事案があります。

一般的に「残波事件」と呼ばれ、2018年に判決が確定しています。

 

この事件は、泡盛の「残波」というブランドで知られる沖縄の酒造メーカー   有限会社比嘉酒造が、

2006年~2010年の4期の間に創業者ら役員4人に役員報酬計約12億円を支払い、またこの間に支払った創業者の退職慰労金6億7千万円が「不当に高い」として、一部金額を法人の損金への算入を認めなかったものです。

 

この酒造メーカーは1948年に設立され、売上高も約20億円と、

中小企業の中では比較的大きい部類に入る企業です。

しかし個人的には、創業者といえども6億7千万円の退職金は少し高すぎるように感じます。

また、役員一人当たりの年間の平均報酬は、単純計算して一人7500万円です。

会社規模の割には非常に高額な役員報酬と感じます。

 

「不当に高い」と税務署は指摘していますが、「不当に」の判断基準は人により大きく異なるでしょう

大金持ちからすると6億円ははした金額かもしれませんが、一般の人からするととんでもない金額です。

税務署はどのような理屈で「不当に高い」としたのでしょうか。

 

税務署は、

比嘉酒造と同業他社である酒造会社のうち、沖縄と近隣県で総売上金額が同社の2分の1以上2倍以下(倍半基準)となる企業約30社を抽出し、

これらの役員給与の各社最高額の平均値と比較し、その超える部分を「不相当に高額」と判断しました。

役員退職金に関しても、比嘉酒造は「最終月額報酬×勤続年数15年×功績倍率3」と計算していましたが、

最終月額報酬部分が「不相当に高額」であるため、同じく倍半基準により、差額部分は損金として認めないとしました。

 

これに対し裁判所は、

「役員報酬の最高額を、近隣の同規模の同業他社と比較する事は合理的である」としました。

しかし、役員の退職金の計算で使用する月額報酬に関しては、

創業者の会社に対する貢献の大きさを考慮すると、同業他社の「平均額」との比較は馴染まないとし、

同業他社の最高額を超えない限りは不相当に高額な部分があるとはいえない」

としました。

 

この判決により明確に、近隣の同規模程度の同業他社と比べて、

役員報酬、役員退職金共に、逸脱したものでなければ問題ないという事が示されました。

 

冒頭の

・役員報酬はいくら取っても構わないのか?

に関しましては、近隣の同規模程度の同業他社と比べる必要がある、というのが回答になります。

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