2022年6月22日 3:01 pm

牧会計事務所 所長の牧です。

 

先日、顧問先の不動産会社から相談がありました。

その不動産会社のお客様が、土地を売る売買契約をした後、引渡し前に相続が発生してしまいました。この場合に相続と譲渡所得はどうなるのでしょうか?という相談でした。

相続税と譲渡所得税を分けて説明いたします。

 

相続について、仮の数字で説明します。土地の売買代金が1億円、その土地の相続税評価額が8000万円、手付金を1000万円はすでに収受しています。

 

相続人が取得する財産は、引渡しが終わっていなくても土地の相続税評価額ではなく、相続発生時の土地の売買契約に基づく残代金をもって評価します。この場合8000万円ではなく、1億円から手付金1000万円を差し引いた9000万円になります。

 

そして、被相続人である売主が負担することになっていた土地売買の仲介手数料その他の経費は相続税の計算上債務控除の対象とされます。

 

ただし、土地の売買契約日から相続発生日までの期間が通常の売買よりも長期間であるなど、上記の残金請求権の価額として適当でない場合は、別途個別に評価した金額が相続税評価額になります。

 

 

次に譲渡所得の申告については、基本は引渡日を譲渡の日として申告します。ただし、納税者の選択により、契約日を譲渡の日とすることも可能です。これは、相続が発生した場合も同じです。

 

①契約日を譲渡の日とした場合

この場合は、被相続人の譲渡所得として準確定申告をします。相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内にしなくてはなりません。住民税は、その年の1月1日を期日として前年分の所得に対して課税されます。被相続人は翌年1月1日現在において死亡していますので、この譲渡所得に対する住民税は課税されません。さらに、納付した所得税は相続税の申告上の債務控除になります。

 

②引渡日を譲渡の日とした場合

この場合は、相続人が確定申告で譲渡所得の申告を行います。譲渡所得に対して所得税と住民税の両方が課税されます。相続人の所得として申告する場合には、相続税の取得費加算の特例の適用があります。取得費加算とは、相続の開始があった日の翌日から3年10か月以内に相続した土地を譲渡した場合には、土地の取得費に一定の算式で計算した金額を加算することができます。

 

相続人が納付した所得税と住民税は相続税の申告上の債務控除にはなりません。

 

このように譲渡所得については、納税者が選択適用ができるので譲渡所得と相続税の両方を考えて有利な方を選択することが大切です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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