確定申告の申告が始まりました。毎年同じですが、やはり慌ただしい日々が続いています。
牧会計事務所 所長の牧です。
最近、顧問先で社長交代やまだ交代の時期ではないけれど、何年か先に交代したいとの相談が増えてきました。30年以上顧問をさせて頂いている会社もかなりあるので、私の年齢からそのような時期になってくるのは当然です。後継者がいる会社では割と問題なく事業承継ができるのですが、後継者がいない場合は色々と問題がでてきます。会社内の有望な従業員に会社を引き継がしたいけど株をどのように持たせれば良いかの問題も出ます。
同族会社の場合は、株主と経営者が同じであるケースがほとんどですから、出資と経営が分離されているといわれてもあまりピンと来ません。会社の利益は株主のもであり、それを任されているのが経営者でその対価は役員報酬だけです。利益を上げられない経営者は株主によって辞めさせられることもあり、会社の重要な議案は株主総会で決定されます。3分の2以上の株を持っている株主はすべての議案に決定権をもつことができます。
同族以外の者を後継者にする場合、全株を後継者に渡してしまうと先代の意思に反した場合にも拒否をすることが出来なくなります。この場合に黄金株をうまく使うと円滑な事業承継することが可能になります。
黄金株とは、拒否権付種類株式といい、株主総会や取締役会での決議に対して拒否権を持つ株式をいいます。拒否権の内容は、代表取締役や取締役の選任・解任、取締役の報酬決定、事業譲渡・合併などです。そのため黄金株は中小企業の事業承継や敵対的買収に対する防衛策として用いられます。
黄金株は1株だけでも強力な権限があるため、使い方によってはメリットにもデメリットにもなります。
1.メリット
・先代経営者が黄金株によって後継者の誤った決断を拒否することで会社の経営が正しい方向で進むように導くことができます。
・黄金株は1株だけでも重要な決議を否決できる効力があるので敵対的買収を仕掛けてきた相手が株式を買い進めて支配権を獲得したとしても黄金株の効力によって支配を食い止めることができます。
・強力な権限をもつ黄金株の相続税評価額は普通株式と同様に評価されます。
2. デメリット
・後継者が重要な経営判断を下すたびに拒否権を発動していると、実質的な経営権は黄金株の所有者にあることになり、後継者のモチベーションが下がったり、経営能力が育たなかったりする弊害になることもあります。
・黄金株は相続者によっては、経営に支障がでる可能性があります。経営に関係のない相続人が黄金株を取得した場合に経営方針に拒否権を持つことになり拒否権の発動が経営に支障をきたします。
・黄金株は1株でも強力な権限を持っているので、普通株式を保有しているほかの株主から不満が出る可能性があります。