2024年9月4日 7:17 pm

お盆休みも終わり最近は夜鈴虫が鳴く様になり、車でラジオをつけると頻繁に井上陽水さんの「少年時代」が流れており…何となく秋の気配を感じるようになりました。

 

牧会計の税理士の近藤です。

 

最近テレビで名のある企業が移転価格税制で追徴税額を納付したニュースを久々に聞きました。
中小企業ではあまり馴染みがないですが、海外展開を繰り広げる大企業には付いて回る税制になります。移転価格税制とは、国境をまたいだ関連会社間の取引価格を適正に設定することで、国内企業の所得移転や租税回避を防止するルールです。企業が国外関連者である海外の関連企業等との間で棚卸資産の売買、役務(サービス)の提供などの取引価格を通常の価格と異なる金額に設定すれば、国内で発生する利益を海外に移転することが可能となります。そのため、移転価格税制は国外関連者との取引価格を資本・支配関係のない独立の第三者と取引した価格(独立企業間価格)で計算し直すことで、適正な国際課税の実現を目的とするものです。日本は、国外関連取引を通じた所得の海外移転に対処することにより、適正な国際課税を実現することを目的として、1986年に移転価格税制を導入しました。

 

国外関連者とは❓「外国法人」で「特殊の関係」のある者をいいます。「特殊の関係」には、形式的支配関係と実質的支配関係の2つがあります。

 

形式的支配関係
親子関係等・一の法人が他の法人の株式等の50%以上を直接又は間接に保有している場合

兄弟関係等・二の法人が同一の者にそれぞれの株式等の50%以上を直接又は間接に保有されている場合

 

実質的支配関係(その他特殊な関係)
• 役員および使用人の状況
• 事業活動の状況
• 資金調達等の状況
• 無形資産の状況

 

この移転価格税制は国外グループの関連者に適用されるものであり国内取引には適用されませんが、国内においては国内関係会社間取引価格についての課税として低額譲渡又は高価買入の場合、寄付金課税が適用される場合があります。国内グループ会社との取引は、外部の第三者企業との取引に比べて恣意性が入りやすく価格も適正でないことが多いのは事実です。法人税法等の各規定は、市場価格や第三者間で成立する価格を前提としていますが、例外的にそのような価格となっていない場合(無償を含みます)には、税法は寄附金税制で対応する形になっています。無償部分や価格が適正でない場合の市場価格等との差額部分について、贈与等があったとして寄附金課税が行われる可能性も出てきます。寄付金は会計上は経費ですが、法人税法では各企業の資本金や所得に応じて損金算入の限度額を設けており、国や地方公共団体等の特定寄付金以外の寄付金の合計額が限度額を超える場合は超える部分の寄付金は経費としては認められず企業の所得に加算されて課税されるケースがあります。

 

起業した場合、最初は一つの法人からスタートするケースが多いと思いますが事業が順調に進につれ第二、第三の法人を作る場合この様な相互間の価格の問題が発生すると思われますので注意していただきたいと思います。

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