最近ようやく秋の気配を感じるようになりました。短い秋を楽しみたいと思います。
牧会計事務所 所長の牧です。
私のブログでも退職金の話は何度もさせていただいております。経営者などが退職時に受け取る役員退職金は、法人の税務のなかで最も納税者と課税当局の対立要因になりやすいテーマです。その計算のなかで否認される要因になるのが”功績倍率”です。
役員退職金の計算には次の計算式が使われることがほとんどです。役員退職金=最終の役員報酬月額×役員勤続年数×功績倍率 法律で明文化されてはいないものの、この計算式が現状では退職金を算出するための唯一のルールになっています。問題はこの算式の功績倍率です。功績倍率とは、退職する役員が法人にもたらしてきた貢献を退職金の額に反映させるための補正率のようなものです。しかし貢献度合いを数値化するので問題が起きるのです。貢献度合いは会社ごとや人ごとで違ってくるはずなのに課税当局は一定の基準を設けようとしています。その一定の基準を超えると、”高すぎから認めませんよ”ということになります。
実務においては、功績倍率が3倍を超えると国税に過大と判断される可能性が非常に高くなります。なぜ功績倍率が3倍なのかというと、昭和40年~50年代にあったいくつかの裁判で”3倍が妥当”とされたことが判例としていかされているからです。では3倍を適用すれば問題がないかといえば、そうではありません。判例では3を下回る1・18や2・5、2・3や1・4が適用された例があるのです。だから税理士としては、功績倍率の適用には本当に悩んでしまいます。裁判所は役員報酬と同様に”功績倍率は類似した業種や規模の法人から導き出す”と簡単に言いますが、同業他社の平均的な功績倍率を納税者はどのようにすれば知ることが出来るのか?と逆に問いたい。
私見ですが、内部留保が十分ある会社の役員退職金は、功績倍率を2~3倍まで、内部留保が少ない会社の役員退職金は2倍を超えないまでと決めています。また退職する時期を生命保険の解約返戻金が一番高いときに解約して充当するため、その時期に合わせて退職する場合には、より功績倍率は抑え気味にして決定をしています。さらに名目だけでなく本当に経営を譲って退職しているかも確認します。
事業経営の功労者として退職金を多くもらいたいと思うのは当然のことと思いますが、否認のリスクがあるのでその金額は慎重に決定をしてもらいたいと思います。